米騒動に似た、手拭い騒動
2024年。今年、田舎に住んでいると、ニュースで報じられる「米不足」の話題が、どこか遠い世界の出来事のように感じられました。しかし、いざそういった状況に直面すると、「ひりひりと身につまされる」ような思いを実感するものです。
実際、弊社の場合、2022年の秋頃から徐々に手拭いの素材が手に入りにくくなり、その状況が2024年初頭まで続くということがありました。
これまでそのような事態を経験したことがなかったため、大いに困惑した、という話です。
織物は種類によって製造工程が異なる
タオル製造業者であれば手拭いも製造できると思われがちですが、実際には織物の種類が異なるため、タオル織機では手拭いを織ることができません。そのため、弊社では協力業者から手拭い用の素材を定期的に仕入れ、それにプリントや縫製などの加工を施して製品化しています。
タオルと手拭いの違いを簡単に説明すると、タオルは「地織り」と呼ばれるベース部分と、ループ状の「毛織り」の部分があり、これらを緯糸(横糸)で織り上げていきます。一方、手拭いは浴衣の生地にも使われるような、着物の反物と同じ幅(「一巾」と呼ばれます)の織物で、地織りと緯糸で織り上げられます。
さらに、織った後の風合いの加工にも大きな違いがあります。タオルは求められる用途や仕上がりに応じてさまざまな風合い加工が施されます。一方、手拭いは皺がなく、幅がほぼ均一な状態に仕上げられることが求められます。このように、織りの方法から晒し(漂白などの加工)に至るまで、必要となる設備が大きく異なるのです。
コロナ禍が大きな転機だった
2020年初頭から始まった新型コロナウイルス感染症の影響で、イベントは徐々に縮小または中止となり、外出制限により旅行者も減少しました。この影響が手拭いの素材にどのように及んだかというと、特に大きかったのはお祭りの中止や縮小です。お祭りでは、記念品としてやその場での使用を考慮して手拭いを配る習慣が広くあります。また、お祭りに着る浴衣だけでなく、旅館で提供されるリネン用途の浴衣も利用が減り、需要が低迷しました。
繊維業界は、こうした安定的で継続的な需要によって製造工程が支えられている部分が大きいと考えています。特に手拭いのように長い歴史の中で培われてきた製造プロセスは、細かく分業化されていることが多く、その一見単純に見える作業や道具も、実際には簡単に引き継ぐことができないケースが多々あります。単純に今の感覚では、製品単価とその加工内容=労働単価が合わず、引き継ぎようが無いというのもあります。
一度製造の流れが止まってしまうと、補助金などで一時的に穴埋めされているように見えても、高齢化や後継者不足といった要因が重なり、製造が途絶えることも少なくありません。そして、その空白を埋めるのは容易なことではないのです。
突然動き出した中で
コロナ禍が一段落し、突然イベントやお祭り、旅行などが再開されるタイミングが訪れました。その中で手拭いの素材も、在庫や製造が抑えられ、多くの業者が廃業してしまった状況で、一斉に需要が高まったため、さまざまな方面でパニックとも言える素材確保の動きが起こりました。
結果として、材料も人手も納期もすべてが不足し、手拭いにおける業界がパニックとも言える状況に陥りました。
このままではどうにもならない為
協力業者とも相談し、一旦状況を落ち着かせ、仕切り直す方針を取りました。そのため、受注を制限し、手拭いの製造工程が整うまで待つことにしました。
今振り返ると、ほんの1年ほど前の事ですが、あのときの混乱は一体何だったのかと思うこともあります。
というわけで、オリジナル手拭い、販売用手拭い、手拭いハンカチのご依頼お待ちしています。
手拭い騒動の思い出でした。
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